民法改正(債権法改正)による時効の影響
平成29年3月までの事故または症状固定との診断は時効完成の可能性があります。
交通事故,傷害事件など→不法行為による損害賠償を考えてみましょう(当事者間に契約関係がない場合です)。
改正により人身傷害の不法行為による損害賠償請求については消滅時効期間が「損害及び加害者を知った時から5年」となります(724-2, 724条①)。改正前はこれが3年でした。
ここで時効の起算点となる「損害を知った」とは,後遺障害については症状固定日(症状固定の診断がされた日)となります(傷害による損害(治療費や休業補償など)については事故日が起算点となり得ますのでご注意ください)。 ※症状固定については「後遺障害等級認定」の項をご参照ください。
いつの時点から改正法が適用されるのでしょうか。改正附則35Ⅱは,改正法の施行の際に既に時効が完成していた場合は改正法が適用されないとしています。つまり,平成29年3月に事故に遭ったとしても症状固定の診断が平成29年4月以降であれば,後遺障害に関する損害については改正法施行日(令和2年4月1日)に時効は完成していませんので,症状固定と診断された日から5年が経過しない間は損害賠償請求が可能となります。逆に,平成29年3月までに症状固定の診断がなされている場合は,改正法の施行の際に既に時効完成していることになります。なお,時効完成までの間に時効の完成猶予(かつての時効停止)や時効の更新(かつての時効中断)の事由があれば別となります(相手方への支払請求や相手方からの支払呈示など)。
相手方と契約関係が存する医療事故による損害賠償請求や安全配慮義務違反などの事案は,債務不履行にもとづく損害賠償の時効期間が問題となりますので別項にて解説いたします。